~ペットの薬膳・東洋医学~山芋、ヤマノイモをペットに与えると得られるメリットを獣医師が解説

薬膳

山芋は長イモとも呼ばれ、山野に自生するヤマノイモ科のツル性の多年草です。

自然に生えているものは自然薯(ジネンジョ)としても知られています。ムカゴは山芋の珠芽です。ヤマノイモ属の植物の地下部分は、植物形態学上は、茎と根の中間型とされています。

性質

五性:平  五味:甘  帰経:脾肺腎

主な適応

嘔吐、消化不良、痰熱、痰の多い咳、口渇、脱水

主な作用

  • 老化防止作用
    山芋はムコ多糖などを多く含むため、細胞組織を潤す働きがあります。これにより老化防止などの作用を持つと考えられています。

  • 血糖値の上昇抑制作用
    山芋はデンプンを多く含んでいます。一般的に、デンプンは消化分解されると糖となり、糖尿病の発病の原因にもなります。しかし山芋には血糖値の上昇を抑える作用があることが分かっています。その因子となっているのはレジスタントスターチと言われる、消化吸収されないでんぷんです。消化吸収されないので、山芋が炭水化物であるにも関わらず血糖値を上げにくいのです。

    更に、このレジスタントスターチは他の物質の消化吸収を遅くするという働きがあるため、一緒に食べた他の物質の消化吸収の速度を抑え、血糖値抑制作用や血液中コレストロール及び中性脂肪の低下などをもたらしてくれます。このことから、糖尿病などの予防に有効であるとされています。

  • 強壮作用
    山芋に含まれるサポニンの働きが関与していると考えられています。

  • 動脈硬化予防作用
    山芋のコリンという成分は新陳代謝を活性化すると有名な物質ですが、その他にもコレステロールが血管壁に着くのを防ぎ、動脈硬化を予防する働きがあります。

    また、新陳代謝を活性化するコリンの他に、コレステロールを減らして取り除き、血液中の脂質の酸化を防ぐサポニン、利尿作用のあるカリウムが含まれ、これらの成分の働きにより、水分代謝を促し、腎臓の機能を高める効果があります。

東洋医学的な効能

健脾、補腎、補気、養肺、益精、収渋

性味

四性が平である事から、身体の冷えや熱さに関わらず使える、取り入れやすい食材です。


五味が甘である事から、脾胃を整え、気や血を補ってくれる食材です。身体の強張りを緩める作用があります。

帰経

肺は気を下ろし全身に巡らせる働きや、陰である津液の巡りにも関与します。そのため、陰虚証にも効果があり、津液の巡りの悪さから起こる口渇などに効果があり、渇きを消してくれます。

また、東洋医学での肺は大きく呼吸器を示します。そのため肺を潤し、乾いた咳にも有効な食材です。

脾は食物(水穀)の消化吸収を行います。そのため、脾が衰えると水穀から得られる血や津液も虚し、気の不足へと繋がっていきます。山芋は健脾作用があるので、脾を働きを良くすることで、気虚証への効果も発揮します。

また、脾を補うと津液の巡りを良くなり、身体に潤いを与えるだけでなく、津液の滞りによるむくみなどの解消にも繋がります。

腎は気や精の貯蔵を行います。そのため、腎が衰えると身体全体が衰えやすくなります。

また、水分の排出にも関わるので泌尿器にも影響が出てきます。高齢期になってからの頻尿や尿漏れなどが見られる場合にオススメしたい食材です。

特徴的な栄養成分

  • ジアスターゼ(消化促進)
  • ムチン(免疫機能強化、抗糖尿病)
  • コリン(抗動脈硬化、脳機能維持改善)
  • ジオスシン(抗認知症)
  • ジオスゲニン(抗認知症)
  • サポニン
  • βーシトステロール

山芋のヌルヌルの中には消化酵素が含まれています。その量は、大根の約3倍と言われるほど多いです。その為、別名、山のうなぎとも言われます。

ジアスターゼ

山芋に含まれるジアスターゼはデンプンの分解酵素でデンプンの消化吸収を高める働きを持ちます。消化を助け、胸やけを抑えて胃腸の働きを整えます。また、毒素を分解する作用も持ちます。

しかし、ジアスターゼは熱に弱く、また損失するのも早い為、おろして、とろろにする場合は食べる直前におろすのが良いでしょう。

ムチン

ムチンは山芋の粘質成分で肺や胃腸の粘膜を潤して保護する働きがあります。またタンパク質の消化や吸収を高めたり、滋養効果があったりします。

良い組み合わせ

山芋は芋類の中でも珍しく、生で食べられる食材ですので、アスターゼやアミラーゼなど、加熱により失われてしまう消化酵素をぜひ山芋から摂っていきましょう。

一緒に食べ合わせるとよい食材として、マグロやカツオが挙げられます。マグロやカツオは良質なたんぱく質やタウリンを多く含むので、特に猫にはとても良い食材になっています。

タウリンはアミノ酸の一種です。タウリンには体内の状態を一定に保つ働きがあることが知られており、働き過ぎている機能を抑え、低下している機能を改善したりします。猫では特に重要度が高く、不足すると心臓など、重要な臓器に異常が出てしまうアミノ酸です。

 タウリンを適切に摂取することは体の調子を整え、疲労回復にもつながります。山芋はタンパク質の消化吸収を助ける働きがあるため、タウリンが豊富なマグロやカツオと一緒に食べることで、さらなる疲労回復効果が期待できます。

動物へ使う時のポイント

動物も比較的食べやすい食材で、年間を通して手に入りやすい食材の為、取り入れやすいでしょう。しかし、出来れば熱を加え過ぎずに与えられると良いでしょう。

また固く大きいまま与えると喉につっかえることもあるので、細かく刻んだり、卸して混ぜて与えるなどの工夫をすると良いでしょう。

漢方薬としての山芋 山薬(さんやく)

山薬とは、山で産する薬という意味があります。里で採れる里芋に対し、山に自生する山芋という意味で山芋と名付けられています。

山薬(サンヤク)

根茎部分の皮を剥き、蒸してから乾燥させて作ります。色が白いものが良質なものとされています。

山薬(さんやく)の効果

漢方では、滋養強壮、止瀉、鎮咳、止渇のために用いられ、主に消化器症状や乾いた咳のような呼吸器症状に効果があります。

山薬(さんやく)の味

無味無臭

豆知識

元来、山薬は薯蕷(しょよ)と呼ばれていました。これらの漢字は、自然薯(ジネンジョ)の字にも残っているように、薯も蕷も山芋の意味を表します。

昔の中国では皇帝の本名に使われていた文字や似た文字を使う事を避けるという考え方がありました。その影響で、薯蕷(しょよ)→薯薬(しょやく)→山薬(さんやく)と名前が変わっていったとされています。山薬(さんやく)が一番書きやすく、覚えやすいですね。

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