~ペットの薬膳・東洋医学~にんじんをペットに与えると得られるメリットを獣医師が解説

薬膳

性質

五性:平  五味:甘  帰経:肺脾肝

主な適応

消化不良、夜盲症、ドライアイ、気管支炎、咳、高血圧、癌、脂質異常

主な作用

・血糖値の降下
生のニンジンには血糖値の降下作用をもつ成分が含まれています。

・老化防止作用
ニンジンのαカロテン、β-カロテンに抗酸化作用、老化防止作用があります。

・抗ガン作用
ニンジンにはβ-カロテンが豊富で、少量のβ-カロチンの摂取には抗ガン作用があるといわれていますが、多量に摂取すると、逆にガンの発生率が高くなるという報告もあります。

東洋医学的な効能

血虚、陰虚、虚弱体質に。
健脾、消食、滋陰、解毒、補血、化痰、下気、明目

性味

性味が平である事から、身体の冷えや熱に関わらず使える汎用性の高い食材です。
五味が甘である事から、気や血を補う。脾胃を整える。強張りを緩める作用があります。

帰経

肺は気を下ろし全身に巡らせる働きや、陰である津液の巡りにも関与します。そのため、気を下ろす下気や身体を潤す滋潤、津液の滞りにより発生する痰を解消する化痰が東洋医学的作用として列挙されます。

また、東洋医学での肺は大きく呼吸器を示します。そのため、津液の滞りにより起こるドライアイや咳、気管支炎に効果をもたらします。

脾は食物(水穀)の消化吸収を行います。そのため、脾が衰えると水穀から得られる血や津液も虚していきます。にんじんは健脾作用があるので脾を強め、それにより血や津液、潤いを補う事ができます。この健脾作用は西洋医学でいう、消化不良の解消へと繋がっていきます。

しかし、多量に食べると胃の膨満感をもたらし、逆効果になります。適度な量を意識しましょう。

東洋医学では肝と目は深い関係があるとされ、目が悪ければ肝に、肝が悪ければ目に影響が出やすいとされます。帰経に肝があるにんじんは、明目などの西洋医学的な側面だけでなく、東洋医学的にもドライアイや夜盲症などの目に関する作用があるのも納得です。

特徴的な栄養成分

  • β-カロテン(肝機能強化、視力向上)
  • α-カロテン(抗動脈硬化、抗酸化)
  • リコピン(抗酸化、抗老化)
  • アントシアニン(抗糖尿病、肝機能強化)
  • テルペン類
  • 白血球増加因子
  • 食物繊維

β‐カロテン

にんじんはβ-カロテンが野菜のなかでもかなり多いです。

β-カロチンは体内でビタミンAに変わり、目の働きに深く関わります。また、抗酸化作用があり皮膚と粘膜を潤す働きがあります。油溶性なのでにんじんを油で炒めた時と生食の時では油で炒めた時の方が吸収率が7~8倍くらい高いと言われています。また、酢はβ-カロテンを破壊してしまうので、β‐カロテンを取りたい時は酢と一緒に食べないように気をつけた方が良いでしょう。

β-カロチンは細胞壁内にあり、この細胞壁は壊しにくいのですが油と熱で溶かすことができるので、油と一緒に火にかけると良いです。

ニンジンの葉にもβ-カロチンが多く含まれており、カルシウムや鉄分も多く含みますので、葉も油と炒めて食べても良いでしょう。

リコピン

にんじんのβ‐カロテンだけでなく、特に金時ニンジンの色の成分であるリコピンは、抗ガン作用が注目されています。

カリウム

にんじんにはカリウムを排除する成分が含まれているので、利尿剤を使用している場合はにんじんを食べるとカリウム低下症を引き起こしやすいと言われています。その場合は、だるい、不安になる、吐き気がするなどの症状がおこりやすくなるので注意する必要があります。

良い組み合わせ

にんじんはレバーと一緒に火にかけゴマ油をかけ、ご飯と一緒に食べると、ドライアイの防止に効果があると言われています。
また、にんじんとお米を一緒にお粥にすると、胃腸の弱い方の消化不良によく効きます。

動物へ使う時のポイント

甘味があり動物も比較的食べやすい食材で、年間を通して手に入りやすい食材の為、取り入れやすいでしょう。しかし、にんじんばかり多量に与えすぎてしまうと、特に犬猫にとってはビタミンAが多い食材のため、ビタミンA過剰摂取になる可能性があります。にんじんはメインにせず、トッピングや彩り程度にしましょう。

ウサギなどの草食動物の場合もにんじんをメインにしていると、胃の膨満感をもたらし、胃腸の動きを悪くします。結果的に食欲が落ちるなどの影響をもたらす場合があるので、おやつやご褒美など、適度な量にしておきましょう。

漢方薬としてのにんじん(オタネニンジン)

にんじんは漢字では人参と書き、根の形が手や足など人の形に似ているということから名付けられたとされています。

人のように歩いているようなにんじんも。

野菜としてのにんじんは『セリ科』のにんじんであり、漢方薬として使われるにんじんは『ウコギ科』のオタネニンジンというにんじんであるため、全く別の植物です。これらを区別するため、野菜のにんじんは、『芹人参(セリニンジン)』といわれることもあります。

また、漢方薬として使われるにんじんは、古くから『朝鮮人参』『薬用人参』『高麗人参』として親しまれてきましたが、『薬用人参』という呼び方は薬事法に触れると指摘されたこともあり、近年ではあまり使用されなくなってきています。

オタネニンジンの効果

強精、健胃、整腸、止瀉、鎮吐など

オタネニンジンの味

甘みがあり動物でも比較的飲みやすいが、後味に少し苦みあり。

白参と紅参

オタネニンジンはどのように処理されたものかで呼び方が変わります。

  • 白参…外皮を除き天日干しで乾燥させたもの
  • 紅参…蒸して天日干しで乾燥させたもの

漢方薬に使われるのは通常、白参を指します。白参は虫がつきやすいので、しっかりと密閉された容器で保存する必要があります。

成分

  • 水製エキス
    (血糖降下、ケトン体減少、肝RNA合成促進作用)
  • 含水エタノールエキス
    (血圧下降、血糖下降、赤血球数の増加、消化運動亢進、副腎皮質機能増強)
  • 水エタノールエキス
    (コリン作動性の増強作用)
  • サポニン(ジンセノシド)
    (中枢興奮、抗疲労、抗ストレス作用。Rb群は中枢抑制に、Rg群は興奮性に作用。)

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