桃は身体に潤いを与えてくれる食材です。
肌や喉、皮膚など乾燥が気になる場合は食事にプラスしてみましょう。
性質
五性:温 五味:酸甘 帰経:肝肺大腸
主な適応
口渇、便秘、咳、消化不良、高血圧など
葉は外用薬として肌荒れに有効
主な作用
- 整腸作用
桃には水溶性食物繊維であるペクチンが豊富に含まれています。このペクチンには胃腸に優しい整腸作用があります。 - 血中コレステロール値を下げる作用
桃の食物繊維にはコレステロール値を下げる働きがあります。 - 鎮痛作用
桃の木の葉にはグリコシドという成分が含まれています。このグリコシドには鎮痛作用があると言われています。 - 利尿作用
桃の花にはケンフェロールという成分が含まれ、利尿作用があります。
東洋医学的な効能
身体に潤いをもたらします。
生津、潤腸、養肺、潤肌、活血、平喘
性味
四性が温である事から、身体の冷えを取り身体を温めてくれます。旬の時期に取り入れましょう。
五味が甘である事から、脾胃を整え、気や血を補ってくれる食材です。身体の強張りを緩める作用があります。
甘味の温性は、脾胃を温めてくれますので身体を中から温めます。そのため、血の巡りをよくしたり、お腹の調子を整えたりする働きがあります。
また酸の味もありますので、身体から出てしまう水分などを抑え、潤いを保ちます。
帰経
肝
肝は東洋医学では血液の貯蔵や血流量の調整をする臓です。そのため、血行の促進に繋がります。血には栄養だけでなく水分、津液も含まれていますので、結果として肝を補うことは、血だけでなく、身体に潤いをもたらす事に繋がります。
また、血だけでなく、気の流れにも肝は関与しています。気の流れが滞ると、免疫力の低下が起こります。そのため肝を補うことは免疫力の向上にも重要なのです。
肺
肺は気を下ろし全身に巡らせる働きや、陰である津液の巡りにも関与します。そのため、陰虚証にも効果があり、津液の巡りの悪さから起こる口渇などに効果があり、渇きを消してくれます。
また、東洋医学での肺は大きく呼吸器を示します。そのため肺を潤し、乾いた咳にも有効な食材です。
大腸
東洋医学では大腸と肺は表裏一体の関係をもちます。その為、肺が衰えていると大腸を悪くすると言われています。逆をいえば便秘や下痢など大腸が悪い症状が現れている場合は大腸だけでなく肺を補う必要があります。
肺は先述した通り、水分、つまり津液の調整に関与します。桃は肺だけてなく、大腸にも作用してくれる為、便秘などの場合の大腸の水分調整に効果が出やすいです。
特徴的な栄養成分
- クエン酸(疲労回復)
- カテキン(抗酸化、抗高血圧)
- タンニン(抗酸化、抗菌)
- イノシトール(抗うつ、抗動脈硬化)
- 食物繊維(整腸、抗循環器疾患、抗ガン)
白肉種はフラボノイドが多く含まれています。
フラボノイドは植物自身が紫外線による活性酸素から身を守ったり害虫から身を守ったりする物質です。
ストレス軽減、がんの抑制、免疫を整える、血液をサラサラにするなどの効果があります。
黄肉種はβ-カロテンが多く含まれています。
β-カロテンは、ビタミンAに変換されて粘膜や皮膚、視力などを保つ効果があります。
その為、目の健康やガンの予防などに効果が期待できる成分です。
どちらの桃も水溶性、不溶性、両方の食物繊維をもつ優秀な食材です。
動物に与える時の注意点
糖分が多い
桃にはブドウ糖、果糖など糖分が多いので、糖尿病や膵炎など食事療法が必要な病気にかかったことがある場合には病院に確認しましょう。
種は与えない
桃の種には煎じると大部分が分解されますが、有毒です。また毒だけでなく、種を丸呑みすると腸に詰まり手術で取り出す必要が出てくる時もあります。筆者も何度も手術で桃の種を取り出したことがあります。
桃の種は桃仁として漢方薬にも使われています。漢方は安全、副作用は無い。という方が時々いらっしゃいますが、そんな事はありません。中毒が出ず、効果がある加減の量で調整されています。漢方薬も薬用する量をきちんと守りましょう。
薬と体質との相性
血行を促進する効能が強いので、血栓症の薬を飲んでいる場合や妊娠中は食べないようにしましょう。
注意するべき食べ合わせ
桃はスッポンと一緒に食べると、胸痛などの症状を誘発する恐れがあるので、一緒に食べないようにという勧告が、古い書籍に記載されています。
桃とスッポンはあまり一緒に食べるような料理は無いので大丈夫だと思いますが、健康機能食品の中にスッポンの成分が含まれていることがあるので、桃を食べる時は一緒に食べないように普段飲んでいるサプリメントなどに入っていないか確認すると良いですね。
桃は夏の果物の中で数少ない温性の特徴を持つ果物です。桃のように水分が多い食材は身体を冷やす事が多いのですが、桃は水分を補充しても胃腸を冷やさないという点が長所になります。その為、胃腸が弱い気血両虚の場合でも食べやすい食材です。
逆に熱っぽい場合(肝陽亢盛など)には温性の桃が熱を収めるのに不利なので寒涼性をもつスイカやキュウリなどの方がよいでしょう。
しかし、どんな体質でも食べ過ぎてしまうとお腹が張り、余分な熱を生じるので、桃を食べ過ぎないようにしましょう。
桃の部位ごとの効果
モモの種、花、葉、構脂などにそれぞれの効能があるという記載が古い書籍に載せられています。
- 桃奴(トウド)
これは木の上で乾燥し、冬になっても落ちない桃のことです。正月に採集され、漢方薬として使われています。その桃の五性は「微温性」で、味は苦く、少し毒があります。効能は妊娠出血に効くとされます。 - 桃核(桃仁…トウニン)
モモの種を乾燥させたもので漢方薬の中でもかなり有名です。これの五性は「平性」で、味は甘苦で、働きとしては血行の促進をしたり、腸を潤し便秘を解消したりする事が挙げられます。
- 桃花(トウカ)
モモの花を旧暦の三月三日に採集して、絹の袋に入れて、日陰に掛け乾燥させます。これの五性は「平性」で、苦味がありますが毒はありません。効能は顔色をよくしたり、利尿してむくみを解消したりします。さらに便通を改善します。 - 桃葉(トウヨウ)
若葉のほうが効能が強いとされ、これの五性は「平性」で、味は苦いですが毒はありません。効能は皮膚病、時、口内炎などに効果があります。
漢方薬 桃仁
桃仁は特によく漢方薬で使われる物なので、詳しく記載しておきます。
効果
破瘀行血、潤腸通便
血瘀、産後悪露、打撲外傷による内出血、気逆の咳に良いです。妊娠中には禁忌です。
モモの内果皮は非常に堅く木質化していて「核」と呼ばれる。この核を割った中身が「仁(じん)」であり、桃仁です。またトウニン末は、桃仁を粉末にした物の事です。
生薬の性状
不均等な卵円形。やや苦く、油様。
7月ごろ、熟した果実から種子を取り出して洗浄後、陽に当てて干し乾燥させて作られます。大きく肥えた、油分の多いものが良品とされます。
主要成分 アミグダリン
アミグダリンは動物にとって中毒の原因になりますので、桃の種は与えてはいけません。漢方薬に使われている物は中毒が起きないくらいの量で配合されています。容量はきちんと守りましょう。
主な薬効、漢方処方
消炎、抗菌、排膿、抗アレルギー、抗炎症、鎮痛、活性酸素消去作用などが認められます。
甲字湯、大黄牡丹皮湯、腸癰湯(ちょうようとう)などに配合されています。
豆知識
桃という漢字は、木の実なので「木」へんが。たくさんの実をつける事から「兆」をつけ、「桃」と名付けられたそうです。この原理だと桃よりも多く木になる果実もありそうですが…。名称の付け方は興味深いですね。
随時更新中です
コメント