~ペットの薬膳・東洋医学~大根をペットに与えると得られるメリットを獣医師が解説

薬膳

性質

五性:涼  五味:甘辛  帰経:脾肺

主な適応

嘔吐、消化不良、痰熱、痰の多い咳、口渇、脱水

主な作用

  • 抗菌作用
    大根のアルコール抽出成分には、ブドウ球菌や真菌に対する抗菌作用があります。そのため、感染症などの場合に有効です。
  • 胆石形成の予防
    生の大根の汁には胆石形成を予防する効果があると言われています。胆石の出来やすい小型犬におすすめです。
  • ガンの予防作用
    大根の食物繊維の1つであるリグニンは、免疫細胞であるマクロファージの働きを高めたり、ガン細胞の発生を抑制したり、胃腸の働きを整える効果があると言われています。これらの作用が互いに関連しあって、結果的に免疫力を高める効果が発揮されていきます。

    また、大根には抗ガン作用を持つインターフェロンの誘発物質も含まれているので、生の大根を薄く切って、よく噛んで食べるのが、この抗ガン作用を引き出すコツです。

    しかし、動物でよく噛んで食べるというのは難しい場合が多いので、ガンに配慮して大根を使ってごはんを作るなら、生の大根を薄く切って与えると良い。という認識で覚えておきましょう。

東洋医学的な効能

消食、下気、生津、化痰、寛中、利湿

• 生は冷やす作用が強いですが、加熱すると温める作用を持ちます
• 胃虚弱体質の場合は生食を避けましょう。また胃虚弱体質の場合は多食するのもオススメしません。
• 生の搾り汁は消渇に効きます。身体に水分が足りてない時に重宝します。

古文献では「生食は気を上昇させるが、加熱食は気を降ろす」と言われています。嘔吐がある時は生で食べるのは控え、お腹を下している時は加熱食を控えましょう。

また「朝鮮人参とは作用が正反対のため、一緒に食してはいけない」とも言われています。人参と大根のなます等、人参と大根は色味においては日本人が好む色合いになって見栄えは良いのですが、せっかくの食材の栄養素が互いに打ち消しあってしまうので、食事から栄養を取るという目的で食事を作る際は一緒に使わない方が良いでしょう。

大根とミカンやパイナップルなどを一緒に食べるとチロキシンの働きを高める物質を抑制し、甲状腺腫を誘発する恐れがあるといわれています。特に高齢の犬や猫は甲状腺の病気が多い動物ですので、与える際は気をつけましょう。

性味

四性が涼である事から、身体の熱を和らげる作用のある食材です。脾胃が虚弱体質の場合は多食を避けましょう。


五味が甘である事から、気や血を補う。脾胃を整える。強張りを緩める作用があります。
また辛もある事から邪気を散らしたり、気血の流れを良くする作用があります。

帰経

肺は気を下ろし全身に巡らせる働きや、陰である津液の巡りにも関与します。そのため、気を下ろす下気や身体を潤す生津、津液の滞りにより発生する痰を解消する化痰が東洋医学的作用として列挙されます。


また、東洋医学での肺は大きく呼吸器を示します。更に、涼の性質をもつため、津液の滞りに加え熱が溜まることで起こる痰熱や口渇などに効果的です。

脾は食物(水穀)の消化吸収を行います。そのため、脾が衰えると水穀から得られる血や津液も虚していきます。大根は消食作用があるので、食べ物の消化を助けることで脾の負担を減らします。そのため、脂っぽい物を食べた時や、食べ過ぎなどにも効果的な食材です。

しかし、涼の性質をもつので脾胃虚弱体質の場合に多量に食べると脾胃を冷やしてしまい、逆効果になります。適度な量を意識しましょう。

特徴的な栄養成分

  • ジアスターゼ(消化促進、胃もたれ改善)
  • メチルメルカプタン(抗血栓)
  • グルコシノレート(解毒機能強化、整腸)
  • 食物繊維(整腸、抗循環器疾患、抗ガン)

大根は上記のように複数の消化酵素を多くもつことが大きな特徴です。

なお、葉にはβ-カロテンやビタミンCが豊富なので、根だけでなく葉も取ると良いでしょう。

ジアスターゼ

大根にはデンプンの消化酵素であるジアスターゼなど、さまざまな消化酵素が含まれています。これらの酵素は特に皮に多いといわれていますので、皮ごと調理するのも良いでしょう。消化を助け、胸やけを抑えて胃腸の働きを整えます。また、毒素を分解する作用も持ちます。

しかし、ジアスターゼは熱に弱く、また損失するのも早い為、大根おろしにする場合は食べる直前におろすのが良いです。

ビタミンC

ビタミンCは主に大根の葉に豊富で、抗酸化力があります。また、ビタミンCは血管の粘膜を強化する働きもあります。

良い組み合わせ

大根は動物性タンパク質との相性が非常に良い食材なので犬や猫など、タンパク質要求量が多い動物にとっては使いやすい食材になります。特に魚に関しては、魚の臭みを消してくれる作用があるので、魚との相性は良いと言えるでしょう。

また、大根はあまりシュウ酸が含まれず、シュウ酸が原因の尿石症の動物でも使いやすいと言われていますが、確かに根の部分は少ないのですが、大根の葉には、葉物野菜と同様にやはり多く含まれていますので、葉を与える時には注意が必要です。

動物へ使う時のポイント

熱を加えると甘味があり動物も比較的食べやすい食材で、年間を通して手に入りやすい食材の為、取り入れやすいでしょう。しかし、根の下の方や生の場合は辛みが出てしまい、嗜好性が落ち、食べつきは悪くなる傾向にあります。可能なら辛味が控えめの大根を使いましょう。

また固く大きいまま与えると喉につっかえることもあるので熱して柔らかくしたり、卸して混ぜて与えるなどの工夫をすると良いでしょう。

漢方薬としての大根 莱菔子(らいふくし)

大根の種子は生薬として昔から用いられています。

大根の種、莱菔子(らいふくし)

大根の種を乾燥させて煎じて用います。

莱菔子(らいふくし)の効果

食積停滞、腹痛泄瀉、咳嗽喘急、肺気上逆、悪心嘔吐など

腹痛や、消化不良、嘔吐、咳や痰などの消化器症状や呼吸器症状に効果があります。

オタネニンジンの味

少し辛みあり。

豆知識

莱菔子(らいふくし)の莱菔は大根の事をさします。

大根は春の七草にも使われており、近縁種のカブに、スズナという別名があることから、大根には、スズ代(すずしろ)という別名がつけられたとされます。

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