第1回 愛玩動物看護師国家試験 一般解説 問1〜10

愛玩動物国家試験対策

ここに載せている国家試験の過去問は一般財団法人 動物看護師統一認定機構HPから引用しています。参考にしてください。

今回は第一回愛玩動物看護師国家試験、一般問題の第1~10問の解説をしていきます。

問1 獣医療に関する記述として正しいのはどれか。

① 獣医療従事者は、個人的な価値観で飼い主に情報を伝えるべきである。
② 生命倫理に獣医療は含まれない。
③ 飼い主の知る権利や決定権を尊重することをインフォームドコンセントという。
④ 動物の安楽死処置において、心身に苦痛を与えることはみとめられている
⑤ 獣医療では、セカンドオピニオンを求めることは行われていない。

答え:3

問1 解説です↓

インフォームドコンセントとは、医療や研究などの場面で、患者や参加者が適切な情報を得た上で、自分の意思で同意することを指します。簡単に言うと、「十分に説明を受けたうえで納得し、自分で決める権利」です。

主なポイントは以下の3点です。

  1. 説明を受ける – どんな治療や研究なのか、リスクやメリットは何かを正しく知る。
  2. 理解する – 難しい専門用語ではなく、分かりやすい言葉で説明されることが大切。
  3. 選択する – 同意するかどうかは本人が自由に決められる。無理に押し付けられることはない。

これは「自分の身体や人生に関わる重要な選択を、自分で決めるための大事な権利」と考えてください。

問2 産業動物の動物福祉に関する国際基準を策定している国際機関はどれか。

① OIE(国際獣疫事務局)
② WHO(世界保健機関)
③ FAWC(産業動物福祉協議会)
④ WAP(世界動物保護協会)
⑤ ISO(国際標準化機構)

答え:1

問2 解説です↓

今回の問題は選択肢3番のFAWCと選んだ人が多かったのではないでしょうか。名称としても、いかにも福祉を決めてそうですよね。なので今回の解説はOIEとFAWCの違いに注意して解説していこうと思います。

ちなみにOIEというのは以前使用されていた呼び方であり、2022年以降はWOAHと呼ばれるようになってきています。さらにFAWCも過去に活動していたものであり、現在はFAWCの活動は終了しています。現在、FAWCの活動はAWCが引き継いで、活動しています。

OIE(現在のWOAH)とFAWCは、どちらも産業動物の福祉に関わる組織ですが、目的や活動内容に違いがあります。

OIE(WOAH)

  • 現在の正式名称:世界動物保健機関(World Organisation for Animal Health)
  • 国際獣疫事務局はOIEの正式名称
  • 役割:動物の健康と疾病管理を国際的に調整する。
  • 活動:家畜の病気予防、国際的な衛生基準の策定、動物福祉の推進

FAWC

  • 正式名称:産業動物福祉協議会(Farm Animal Welfare Council)
  • 役割英国政府に動物福祉の改善を提言する。
  • 活動「5つの自由」の提唱(飢え・渇き、不快、痛み・病気、自然な行動、恐怖・ストレスからの自由)。

違いのポイント

  • OIE(WOAH)国際的な視点で動物の健康と福祉を管理。
  • FAWC英国国内の産業動物福祉の向上に特化。

ちなみに現在、FAWCは動物福祉委員会(AWC)に引き継がれています。どちらも動物の健康と福祉を守るために重要な役割を果たしています🐄🐖🐑

問3 実験動物の福祉における「3Rの原則」のReductionの説明はどれか。

① 適正な飼育管理
② コンピュータ・シミュレーションの利用
③ 動物使用頭数の削減
④ 培養細胞の使用
⑤ 苦痛や恐怖の軽減

答え:3

問3 解説です↓

動物実験の「3Rの原則」は、動物を使った研究をできるだけ負担の少ないものにするための重要な考え方です。3つのポイントがあります。

① 代替(Replacement) 動物の代わりに、細胞やコンピューターシミュレーションを活用する方法を考えます。例えば、薬の効果を試すときに動物ではなく細胞を使うことができる場合があります。

② 削減(Reduction) どうしても動物を使う場合には、できるだけ少ない動物数で実験を行うことが大切です。無駄な実験を減らし、最小限のデータから確実な結論を導きます。

③ 改良(Refinement) 動物の苦痛を軽減する工夫をします。例えば、麻酔を使用して痛みを抑えたり、快適な環境で飼育したりすることが重要です。

この3Rの原則を守ることで、動物への負担を減らしながら、科学の発展を進めることができます。動物を使った研究が必要な場面もありますが、できるだけ慎重に、思いやりを持って取り組むことが大切ですね。

ちなみに、この問題では③か⑤かで悩むかと思いますが、使用する動物の数を減らす③が正解です。

⑤も減らすという漢字が使われてますが、⑤は苦痛や恐怖を減らす、数を減らすものではないのです。⑤はRefinementです。

問4 展示動物の環境エンリッチメントとして正しいのはどれか。

a:給餌器を複雑にして採食時間を長くする。
b:他の動物の鳴き声を流して聴覚を刺激する。
c:生息地に近い環境にするため天敵動物と一緒に飼育する。
d:ストレスを感じないよう常に同じ遊具・玩具を与える。
e:事故防止のために居住空間を単調にする。
① a,b
② b,c
③ c,d
④ d,e
⑤ a,e

答え:1

問4 解説です↓


展示動物の環境エンリッチメントとは?

動物園などで飼われている動物たちが、退屈せずに元気に過ごせるように工夫することです。

どうして必要なのか

展示されている動物たちは、野生のように自分でエサを探したり、敵から逃げたりする必要がありません。そのため、毎日同じ場所・同じ生活だと退屈してストレスがたまってしまうことがあります。人もそうですが、何もすることがないというのは、それはそれでストレスなのです。

ストレスがたまると…

  • 同じ場所をぐるぐる歩き回る
  • 自分の毛をむしる
  • 動かなくなる などの問題行動が出ることも。

工夫

動物の本来の行動を引き出すような工夫をします。これが「エンリッチメント(豊かにすること)」です。

🍽️ 食事エンリッチメント

→ エサを隠したり、難しい場所に置いたりして「探す楽しさ」を作る
例:箱に入れたエサ、凍らせた果物など

🏠 環境エンリッチメント

→ 登ったり、隠れたりできるような場所を作る
例:木の枝、岩、小屋、池などを置く

🎾 おもちゃエンリッチメント

→ 触ったり、壊したりして遊べるおもちゃを用意する
例:ボール、ロープ、段ボールなど

👥 社会的エンリッチメント

→ 他の動物との関わりを大切にする
例:群れで暮らす動物には仲間を一緒にする

ポイント

  • 動物の種の特性をよく知ることが大事
  • 毎回違う工夫をすることで飽きにくくなる
  • 安全で、ストレスにならないようにすることが必要

展示動物にとって、エンリッチメントは「心と体の健康」を保つための大切なサポートです。

問5 細胞小器官とその機能の組合せとして正しいのはどれか。

① リボソーム   物質の加水分解
② リソソーム   タンパク質合成
③ ミトコンドリア   ATP産生
④ 小胞体   物質の細胞外分泌
⑤ ゴルジ体   脂質代謝

答え:3

問5 解説です↓

細胞小器官主な働き備考
遺伝情報(DNA)の保管・
細胞の活動の指令塔
真核細胞にのみ存在
ミトコンドリアエネルギー(ATP)を生産する「細胞の発電所」と呼ばれる
粗面小胞体リボソーム付きで
タンパク質合成
粗=ざらざらして見える
滑面小胞体脂質の合成・解毒などリボソームなし
リボソームタンパク質を合成する小胞体に付くor単独で存在
ゴルジ体タンパク質などを
加工・仕分けして運ぶ
「細胞内の物流センター」
リソソーム不要な物質を分解する「細胞の掃除屋」
液胞水分・養分・老廃物の貯蔵植物細胞で特に大きい
葉緑体光合成を行い栄養
(グルコース)を作る
植物細胞にのみ存在
細胞膜細胞の内外を区切り、
物質の出入りを調整する
全ての細胞に存在
細胞壁細胞の形を保ち、保護する植物・菌類にあり、
動物細胞にはない

これは、この年の必須問題にも同様の問題が出ていました。全てまる覚えしておきましょう。

細胞小器官は、まるで工場のようにそれぞれの役割を持って働いています。これらのおかげで、私たち動物の体は動き続けられるのです。

問6 哺乳類の心臓に関する記述として正しいのはどれか。

① 左心房には動脈血が流れる。
② 左心室には静脈血が流れる。
③ 右心房と右心室の間に僧帽弁がある。
④ 左心房と左心室の間には弁はない。
⑤ 右心室と左心室の壁厚はほぼ同じである。

答え:1

問6 解説です↓

今回の問題は上記の心臓の図をみると分かりやすいかと思います。水色の部分は全身を通過して戻ってきた酸素が少ない静脈血、ピンクの部分は肺を通過してきた酸素が多い動脈血が流れています。

各選択肢の説明をすると

① 左心房には動脈血が流れる。◎
② 左心室には静脈血が流れる。⇒
動脈血が流れる
③ 右心房と右心室の間に僧帽弁がある。⇒
三尖弁
④ 左心房と左心室の間には弁はない。⇒
僧帽弁がある
⑤ 右心室と左心室の壁厚はほぼ同じである。
⇒左心室の方が厚い

ちなみに⑤の解説ですが何故左心室の方が厚いかというと、右心室は収縮することで血液を心臓⇒肺へ送ります。しかし左心室は心臓⇒全身へ血液を送らなくてはならないので、その分左心室の方がしっかり収縮する必要があるために壁厚(心臓の筋肉)は厚くなる必要がある、といわれています。

問7 心臓の拍動で最初に興奮が始まる部位はどれか。

① 心尖部
② 洞房結節
③ 房室結節
④ プルキンエ線維
⑤ ヒス束

答え:2

問7 解説です↓

心臓の「刺激伝導系(しげきでんどうけい)」というのは、心臓が自分でリズムよく動くための“電気の通り道”みたいなものです。

参考:看護roo!

全体の流れ

上の図をみても分かるように、心臓は

洞房結節 → 房室結節 → ヒス束 → 右脚・左脚 → プルキンエ線維

の順に信号が流れて、心房と心室がリズムよく動いています。これが「心拍」の正体です。

各部位の詳細

洞房結節:右心房にある「ペースメーカー」。ここで電気信号が発生し、心拍のリズムを決めます。

房室結節:電気信号が少し遅れて伝わるポイント。この遅延のおかげで、心房が収縮してから心室が収縮するタイミングが調整されます。

ヒス束:心室へ信号を送るための「電線」。左右の心室へと分かれて伝わります。

プルキンエ線維:最終的に心筋細胞へ電気信号が伝わり、心室が収縮します。

これらの動きは心電図に表すことが出来ます。そのため、どの部位に電位が作動しているかは心電図をみれば分かるようになっています。

問8 呼吸中枢があるのはどれか。

① 小脳
② 大脳
③ 中脳
④ 延髄
⑤ 脊髄

答え:4

問8 解説です↓

名称役割・働き
大脳考える・感じる・記憶・運動指令など、
人間らしい活動の中心
中脳目や耳の反応、姿勢の調整
間脳自律神経やホルモンの調節、感覚の中継
小脳バランスと運動の調整、なめらかな動きに関わる
延髄呼吸、心拍、血圧など
命に関わる基本的な働きを調整
脊髄脳と体をつなぐ信号の通り道、反射の中心
大脳と小脳・延髄をつなぐ情報の通路
+呼吸の調整にも関わる
視床感覚(痛み・温度など)を大脳へ届ける中継地点
下垂体ホルモンを出して体の成長や代謝をコントロール

脳の各部位の働きは問題でも出やすい問題です。特に延髄や小脳、中脳、下垂体などは特徴的なので試験に出やすい部分です。

問9 内分泌腺と分泌するホルモンの組合せとして正しいのはどれか。

① 副腎皮質   オキシトシン
② 上皮小体   カルシトニン
③ 膵島   グルカゴン
④ 下垂体前葉   アドレナリン
⑤ 精巣   プロゲステロン

答え:3

問9 解説です↓

参照:コトバンク
細胞の名前分泌するホルモン働き
β(ベータ)細胞インスリン血糖値を下げる
(血液の中の糖を細胞にしまう)
α(アルファ)細胞グルカゴン血糖値を上げる
(肝臓から糖を出す)
δ(デルタ)細胞ソマトスタチン他のホルモンの分泌をストップする(調整役)
PP細胞(F細胞)膵ポリペプチド膵臓の働きや消化に関係(はっきり分かってないことも多い)

膵島というのは、膵臓ランゲルハンス島の総称です。膵臓は1つの臓器内で真逆の働きをする細胞同士が集まる珍しい臓器ですので、試験にも出やすいところですので、特にαとβの働きの違いを混同しないように覚えましょう。

ちなみに他の選択肢についてもみておくと

① 副腎皮質   オキシトシン⇒下垂体後葉
② 上皮小体   カルシトニン⇒
甲状腺
③ 膵島   グルカゴン ◎
④ 下垂体前葉   アドレナリン⇒
副腎髄質
⑤ 精巣   プロゲステロン
⇒卵巣

問10 腎臓で産生されるエリスロポエチンの主たる機能はどれか。

① 腎臓集合管における水の再吸収亢進
② 骨髄における赤血球の産生亢進
③ リンパ節における免疫関連細胞の活性化
④ 肝臓における糖の代謝亢進
⑤ 副腎皮質におけるアルドステロンの分泌亢進

答え:2

問10 解説です↓

項目内容
分泌場所腎臓
働きのターゲット骨髄(こつずい)
※骨の中にある血を作る工場
主な働き赤血球を作るように命令して、
赤血球の生産を増やす
いつ出るの?血の中の酸素が足りないとき
(貧血、山登りなど)

エリスロポエチンは、腎臓から出て、赤血球をもっと作るように、骨に命令するホルモンです。マラソン選手が高地でトレーニングするのは、このエリスロポエチンが増えて赤血球がたくさん作られるからという話もあります。

他の選択肢についても見ておくと

① 腎臓集合管における水の再吸収亢進⇒バソプレシン
② 骨髄における赤血球の産生亢進 ◎
③ リンパ節における免疫関連細胞の活性化⇒
抗原提示細胞
④ 肝臓における糖の代謝亢進⇒
インスリン、グルカゴン
⑤ 副腎皮質におけるアルドステロンの分泌亢進
⇒アンギオテンシン

エリスロポエチンが腎臓と関連しているので、①が引っ掛けとして出された選択肢でしょうね。ホルモンの働きを覚えているのかを問われた問題です。

慢性腎不全は犬も猫も多い病気ですが、腎不全が悪化すると貧血になってしまうは、このエリスロポエチンが関与しています。そのため、エリスロポエチン製剤を注射することで腎不全の動物の貧血を緩和させる治療が病院では行われます。

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