ここに載せている国家試験の過去問は一般財団法人 動物看護師統一認定機構HPから引用しています。参考にしてください。
今回は第1回愛玩動物看護師国家試験、一般問題の第11~20問の解説をしていきます。
問11 犬の腎臓に関する記述として正しいのはどれか。
① 右腎は遊走腎とよばれる。
② ネフロンは1個の腎小体とそれに続く尿細管で構成される。
③ 内側縁のくぼみを腎乳頭という。
④ 水の再吸収は主として遠位尿細管で行われる。
⑤ 血中抗利尿ホルモン濃度の上昇により希釈尿が産生される。
答え:2
問11 解説です↓
今回は腎臓について全体的に問われている問題ですね。この問題は少し難易度が高めですが、この年の必須問題でも似たような糸球体の問題が出ていますので、腎臓をしっかり学んできた方はあっさり2問とも解けたでしょう。他の人と差がつく問題ですね。

糸球体とボーマン嚢を合わせて腎小体。腎小体と尿細管を合わせてネフロン。
ここが混乱しやすいので出題されやすいです。
他の選択肢についても触れておくと
① 右腎は遊走腎とよばれる。⇒左が遊走腎。右側は左腎より頭側に固定されています
② ネフロンは1個の腎小体とそれに続く尿細管で構成される。⇒◎
③ 内側縁のくぼみを腎乳頭という。⇒腎門(そんなに大事な知識じゃない)
④ 水の再吸収は主として遠位尿細管で行われる。⇒近位尿細管が約70%といわれる
⑤ 血中抗利尿ホルモン濃度の上昇により希釈尿が産生される。⇒逆。濃くなる
問12 脳神経に関する記述として正しいのはどれか。
① 視神経は運動神経である。
② 舌下神経は感覚神経である。
③ 三叉神経は眼球運動を司る。
④ 内耳神経は第X脳神経である。
⑤ 迷走神経は副交感神経を含んでいる。
答え:5
問12 解説です↓
こちらの問題も、この年の必須問題に関連した脳神経の問題が出ていました。脳神経は12個と決まっているので出しやすいのです。
脳神経について説明する前に、まずは選択肢にも一部出てきた「運動神経」「感覚神経」「交感神経」「副交感神経」についてみていきましょう。
神経の名前 | 何をする? | どこからどこへ? | いつ働く? |
---|---|---|---|
感覚神経 | 「感じる」神経 | 体 ➡ 脳 | 何かを感じたとき (痛い、冷たいなど) |
運動神経 | 「動かす」神経 | 脳 ➡ 筋肉 | 動くとき (走る、話すなど) |
交感神経 | 「戦う・動く」神経 | 自律神経のひとつ | 緊張・ストレス・興奮時(ドキドキ、汗) |
副交感神経 | 「休む・リラックス」神経 | 自律神経のひとつ | おちついてる時・ 寝てる時 |
例えば熱いものを手で触れたときに「熱い!」と感じるのは感覚神経が働くからです。そこで感覚神経のおかげで手から脳へ信号がいき、脳が手へ「手を引っ込めろ!」という信号が伝わるので手を曲げることが出来るのです。
交感神経は簡単に言えば活動的に動くときに働く神経で、副交感神経は休む時に働く神経です。では、これを踏まえたうえで各脳神経の働きをみてみましょう。

では上記までの解説をふまえて選択肢を全てみていきます。
① 視神経は運動神経である。
視神経は視覚を司るもので、目を動かす神経ではないです。目を動かす神経は、動眼・滑車・外転神経などです。そのため、これは不正解ですね。
② 舌下神経は感覚神経である。
舌下神経は舌の運動を司る神経なので運動神経です。なので感覚神経ではないので不正解です。
③ 三叉神経は眼球運動を司る。
三叉神経は顔面の感覚や咀嚼筋の運動の働きがあります。目を動かす神経は、動眼・滑車・外転神経などです。なので、これも不正解です。
④ 内耳神経は第X(10)脳神経である。
内耳神経は第Ⅷ(8)脳神経なので不正解です。
⑤ 迷走神経は副交感神経を含んでいる。⇒正解
問13 下垂体から分泌され、排卵を誘発するホルモンはどれか。
① 黄体形成ホルモン
② ゴナドトロピン放出ホルモン
③ プロラクチン
④ プロゲステロン
⑤ エストラジオール
答え:1
問13 解説です↓
部位 | ホルモン名 | 略称 | 主な働き |
---|---|---|---|
前葉 | 成長ホルモン | GH | 体を大きくする。骨や筋肉の成長を助ける。 |
甲状腺刺激ホルモン | TSH | 甲状腺に働いて、ホルモンを出させる。 | |
副腎皮質刺激ホルモン | ACTH | 副腎に働いて、ストレスに関わるホルモンを出させる。 | |
卵胞刺激ホルモン | FSH | 卵巣や精巣に働いて、卵や精子を作るのを助ける。 | |
黄体形成ホルモン | LH | 排卵やホルモンの分泌をうながす。 | |
プロラクチン | PRL | 母乳を作るのを助ける。 | |
後葉 | バソプレシン (抗利尿ホルモン) | ADH | 腎臓に働いて、水を体にとどめる。 |
オキシトシン | (OT) | 子宮を収縮させる。母乳を出すのも助ける。 |
上記が下垂体から分泌される主なホルモンです。
それぞれの選択肢をみていきます↓
① 黄体形成ホルモン◎
② ゴナドトロピン放出ホルモン⇒性腺刺激ホルモン放出ホルモン。視床下部から分泌。
③ プロラクチン⇒下垂体から分泌されるけど働きが違う
④ プロゲステロン⇒卵巣の黄体から分泌
⑤ エストラジオール⇒卵巣。エストラジオールはエストロゲンのうちの1つ。
問14 交尾排卵動物はどれか。
a:牛
b:犬
c:ウサギ
d:猫
e:豚
① a,b
② b,c
③ c,d
④ d,e
⑤ a,e
答え:3
問14 解説です↓

ウサギと猫は特に有名なので覚えておきましょう。
問15 内胚葉由来の臓器はどれか。
① 皮膚
② 心臓
③ 肝臓
④ 精巣
⑤ 乳腺
答え:3
問15 解説です↓
器官系・部位 | 内胚葉由来の主な臓器・構造 |
---|---|
消化器系(主に上皮) | 咽頭、食道、胃、小腸、大腸、直腸の上皮、肝臓、膵臓 |
呼吸器系 | 咽頭、喉頭、気管、気管支、肺(上皮部分) |
泌尿器系(部位による) | 膀胱上皮、尿道の一部 |
内分泌器官 | 甲状腺、上皮小体(副甲状腺)、胸腺(上皮成分) |
その他 | 中耳腔上皮、耳管上皮、扁桃の上皮、咽頭の一部、舌の一部上皮 |
内胚葉は主に「消化管とその付属器官+呼吸器の上皮」に関わります。
胚葉とそこからできる主な臓器・組織
① 外胚葉
体の外側や神経系をつくる。
→ 皮膚(表皮、毛、爪)、口腔や肛門の一部の上皮、脳、脊髄、末梢神経、網膜、耳の内耳など。
② 中胚葉
筋肉・骨・血管・生殖・泌尿系など体の構造や循環系をつくる。
→ 筋肉、骨、軟骨、血液、心臓、血管、腎臓、尿管、生殖器(卵巣、精巣)、脾臓、結合組織、皮膚の真皮など。
③ 内胚葉
消化器・呼吸器の内側(上皮)や一部の内分泌器官をつくる。
→ 消化管(咽頭〜直腸までの上皮)、肝臓、膵臓、気管、肺(上皮)、甲状腺、上皮小体、膀胱の一部など。
問16 犬および猫の新生子の飼育と看護に関する記述として正しいのはどれか。
① 生後、なるべく早く混合ワクチンを接種する。
② 体重測定は1週間に1回程度でよい。
③ 排便の世話は不要である。
④ 母乳の代用に牛乳を使用できる。
⑤ 低体温症に気を付ける。
答え:5
問16 解説です↓

新生子保育に大事な点をまとめました↓
① 体温管理
- 新生子は体温調節が未熟。室温や保温は重要!
- 低体温(35℃以下)は危険
② 授乳・栄養管理
- 初乳は非常に重要(免疫グロブリン含有) → 出来るだけ早く摂取
- 母乳が不足/飲めない場合 → 犬猫用人工乳(哺乳瓶/シリンジ使用)
- 哺乳間隔(目安)
- 生後1週 → 2〜3時間ごと
- 生後2週 → 3〜4時間ごと
- 生後3〜4週 → 4〜6時間ごと
- 誤嚥注意 → 一度に大量に飲ませない
③ 排泄の補助
- 生後2〜4週までは自力排泄困難
- 本来は母が舐めて刺激 → 人工飼育時は飼育者が刺激(湿らせたガーゼなどで肛門・尿道口を優しく刺激)
- 排尿・排便を毎回確認
④ 体重管理
- 毎日同じ時間に体重測定(1日1〜2回)
- 毎日5〜10%増加が望ましい(目安)
- 体重が増えない/減る → 早急に対応(低栄養、疾患、感染リスクなど)
⑤ 感染予防
- 新生子は免疫が未熟
- 飼育環境は清潔に保つ(消毒、換気)
- 人の手洗い・消毒を徹底
☝観察ポイント
- 体温
- 哺乳量・回数
- 体重の推移
- 皮膚や粘膜の色(チアノーゼや貧血の有無)
- 活動性(元気がない、鳴き声が弱いなどは異常)
- 排尿・排便状況
他の選択肢についても見ておくと
① 生後、なるべく早く混合ワクチンを接種する⇒6週以降が理想
② 体重測定は1週間に1回程度でよい⇒毎日
③ 排便の世話は不要である⇒自分で出来ないので刺激をしないと命に関わる
④ 母乳の代用に牛乳を使用できる⇒新生子用のミルクを使うべき
⑤ 低体温症に気を付ける⇒◎
問17 維持行動に含まれるのはどれか。
① 身づくろい行動
② 交尾行動
③ 母性行動
④ 服従行動
⑤ 挨拶行動
答え:1
問17 解説です↓

動物の維持行動とは、生命を維持するために必要な基本的な行動のことです。
たとえば:
- 食べる(摂食行動)
- 水を飲む(飲水行動)
- 呼吸する
- 眠る・休む(睡眠・休息行動)
- 排泄する(排尿・排便行動)
- 体温を調整する(毛づくろい、日向ぼっこ、穴掘りなど)
などが含まれます。
つまり、生きるために欠かせない行動=維持行動、というイメージです。
問18 犬の認知機能不全に関する記述として正しいのはどれか。
① 雄で罹患率が高い。
② 見当識障害がある。
③ 若齢犬で罹患率が高い。
④ わが国で承認された動物用の薬がある。
⑤ 抗酸化剤の投与で症状が悪化する。
答え:2
問18 解説です↓

犬の認知機能不全(Cognitive Dysfunction Syndrome:CDS)とは
犬の認知機能不全症候群(CDS)は、加齢に伴い脳の機能が低下し、認知・行動・学習能力などに変化が見られる状態です。いわば犬の「認知症」にあたるもので、特に高齢犬に多く見られます。
主な症状
不安:落ち着きがなくなる、吠え続ける、不安そうな行動が増える
見当識障害:家の中で迷子になる、家具の裏に入り出られなくなる
社会的交流の変化:飼い主や他の動物との関わりに変化がみられる(無関心、攻撃的など)
睡眠と覚醒の変化:夜間に起きて鳴く、昼夜逆転する
排泄の失敗:トイレの場所を忘れる、失禁する
活動レベルの変化:無目的に歩き回る、活動量の低下
対策
この病気は完全には治せないですが、以下のような工夫をすることで進行をゆっくりにしたり、症状を軽くすることはできます。
- ω3などの栄養素が入ってるごはん(脳にいい栄養が入っている)をあげる
- 薬を使うこともある
- やさしく接して、安心できる環境をつくる
問19 ビタミン類の名称と化学名の組合せとして誤っているのはどれか。
① ビタミンA レチノール
② ビタミンE トコフェロール
③ ビタミンB1 チアミン(サイアミン)
④ ビタミンB12 リボフラビン
⑤ ビタミンC アスコルビン酸
答え:4
問19 解説です↓
ビタミン名 | 化学名・別名 | 脂溶性/水溶性 |
---|---|---|
ビタミンA | レチノール、レチナール、レチノイン酸 | 脂溶性 |
ビタミンD | カルシフェロール(D2: エルゴカルシフェロール、D3: コレカルシフェロール) | 脂溶性 |
ビタミンE | トコフェロール、トコトリエノール | 脂溶性 |
ビタミンK | フィロキノン(K1)、メナキノン(K2) | 脂溶性 |
ビタミンB1 | チアミン | 水溶性 |
ビタミンB2 | リボフラビン | 水溶性 |
ビタミンB3 | ナイアシン(ニコチン酸、ニコチンアミド) | 水溶性 |
ビタミンB5 | パントテン酸 | 水溶性 |
ビタミンB6 | ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン | 水溶性 |
ビタミンB7 | ビオチン(旧名:ビタミンH) | 水溶性 |
ビタミンB9 | 葉酸(フォレート) | 水溶性 |
ビタミンB12 | コバラミン (シアノコバラミンなど) | 水溶性 |
ビタミンC | アスコルビン酸 | 水溶性 |
ビタミンB12は、体にとってとても大事なビタミンのひとつです。特に 血をつくったり、神経を健康に保ったり するのに必要です。
ビタミンB12の働き
- 赤血球を作る
→ 赤血球は体中に酸素を運ぶ働きをします。ビタミンB12が足りないと、貧血になることがあります。 - 神経を守る
→ 神経が正しく働くために必要です。足がしびれたり、ふらふらしたりするのを防ぎます。 - DNAを作る
→ 細胞が新しくなるときに使う大切な材料になります。
多く入ってる食べ物
ビタミンB12は 魚・肉・卵・乳製品 に多く含まれています。植物性の食品にはあまり入っていないので、ベジタリアンやビーガンの人は注意が必要です。
足りないと出る症状
- 貧血になる(疲れやすくなる)
- しびれやふらつきが出る
- 記憶力や集中力が落ちる
ビタミンB12は、 元気な体としっかり働く脳・神経を保つために欠かせないビタミンです。毎日の食事でしっかりととることが大切です。
問20 栄養素に関する記述として正しいのはどれか。
① 炭水化物は糖質と食物繊維とに分類できる。
② 必須アミノ酸とは体内で生合成できるアミノ酸のことである。
③ ミネラルはエネルギー源となる。
④ ビタミンAが不足すると骨軟化症になる。
⑤ 亜鉛が不足すると脚気になる。
答え:1
問20 解説です↓
栄養素 | 主なはたらき | 分解されると何に変化する? |
---|---|---|
たんぱく質 | 体をつくる(筋肉・皮ふ・内臓など) | アミノ酸 |
脂質(ししつ) | エネルギーになる、体を守る(脂肪のクッション)、ホルモンの材料になる | 脂肪酸 と グリセロール |
糖質(とうしつ) | エネルギーになる(体や脳の動く元) | ブドウ糖(グルコース) |
食物繊維(しょくもつせんい) | 腸(ちょう)の調子を整える、便通をよくする | 消化されにくい → 一部は短鎖脂肪酸に変化(腸内細菌によって分解)、多くはそのまま排出 |
ビタミン | 体の調子を整える | そのまま使われる(分解というより吸収されて働く) |
ミネラル | 骨や歯を作る、体のはたらきを助ける | そのまま使われる(イオンの形で吸収) |
炭水化物、脂質、蛋白質を3大栄養素といいます。そして炭水化物は糖質と食物繊維に分けられます。この三大栄養素は主に体のエネルギー源となります。
そのため、正解は1ですね。この問題はどの選択肢も必要な知識なので、他の選択肢もみていくと
① 炭水化物は糖質と食物繊維とに分類できる。⇒◎
② 必須アミノ酸とは体内で生合成できるアミノ酸のことである。⇒体内合成出来ないものが必須アミノ酸
③ ミネラルはエネルギー源となる。⇒エネルギー源になるのは3大栄養素
④ ビタミンAが不足すると骨軟化症になる。⇒ビタミンD不足。ビタミンAは夜盲症など
⑤ 亜鉛が不足すると脚気になる。⇒ビタミンB1不足。亜鉛欠乏は皮膚病など。
コメント