ここに載せている国家試験の過去問は一般財団法人 動物看護師統一認定機構HPから引用しています。参考にしてください。
今回は第1回愛玩動物看護師国家試験、必須問題の第21~30問の解説をしていきます。
問21 水腫に関する記述として正しいのはどれか。
① 唾液の分泌過剰症である。
② 心不全が原因のひとつである。
③ 水分を多く含む腫瘍である。
④ 肺のみでみとめられる。
⑤ 血液が溜まることをいう。
答え:2
問21 解説です↓
水腫というのは名前のごとく、余計な水分が溜まっていることです。もっと分かりやすい言葉を使うと「むくみ」のことです。お酒を飲んだ後に顔が腫れぼったくなったり、夕方になると脚に靴下の跡がついたりする、あれです。

なぜ体がむくんでしまうのか、というと水分が代謝出来ていないからです。
むくみ(浮腫)は、体の中の水分が必要以上に皮ふの下にたまってしまうことで起こります。
本来、水分は血液と一緒に血管の中を流れていますが、何らかの原因でその水分の一部が血管の外にしみ出してしまい、戻りにくくなると、皮ふの下に水分がたまり、むくんで見えます。
むくみの原因には、次のようなものがあります
- 長時間立っている・座っている:血液の流れが悪くなり、水分が足にたまりやすくなる。
- 塩分のとりすぎ:体が水分をためこもうとする。
- 心臓や腎臓、肝臓の病気:血液や水分の流れ・調整がうまくできなくなる。
- 血液中のたんぱく質(アルブミン)の不足:血管内に水分を保ちにくくなる。
つまり、むくみは水分の流れのバランスがくずれた結果、皮膚の下に水分がたまってしまうことだと理解すると分かりやすいです。
他の選択肢についても触れておくと
① 唾液の分泌過剰症である。⇒唾液が皮膚の下に溜まるのは唾液腺腫くらい。水腫ではない。
② 心不全が原因のひとつである。⇒◎
③ 水分を多く含む腫瘍である。⇒腫瘍ではない。ポコッと一部出来るようなしこりが一般的に腫瘍。
④ 肺のみでみとめられる。⇒足のむくみとかあるから違う
⑤ 血液が溜まることをいう⇒血が溜まるのは、うっ血
問22 膿瘍内に多数みられる白血球はどれか。
① 好酸球
② 好中球
③ 好塩基球
④ リンパ球
⑤ 単球
答え:2
問22 解説です↓
まず血液がどのようなもので構成されているかを説明します。血液は液体である血漿と固体である血球で成り立ちます。この血球には大きく分けると酸素や二酸化炭素を運ぶ赤い赤血球と、免疫などに関与する白血球に分かれます。白血球は多くは血液の中に流れていて、ケガをした場所や感染したところなどがあれば、そこへ向かって流れていきます。そしてさらに白血球は働きにより形や名称が異なるのです。
さて今回の解説ですが他の選択肢についても一緒に役割を表にまとめました↓
白血球の種類 | 特徴 | 主な働き | 増加する主な原因 |
好中球 | 最も多く存在、多分葉核 | 細菌感染の初期防御、食作用 | 細菌感染、炎症、ストレス |
好酸球 | 赤く染まる顆粒を持つ | 寄生虫の排除、アレルギー反応 | 寄生虫感染、アレルギー(喘息、アトピーなど) |
リンパ球 | 小型で核が大きい | B細胞:抗体産生 T細胞:ウイルス防御、免疫調節 | ウイルス感染、慢性炎症、リンパ性白血病 |
単球 | 最大の白血球、腎形核 | マクロファージへ分化、異物処理・サイトカイン産生 | 慢性感染症、組織壊死、結核など |
好塩基球 | 青紫の顆粒(ヒスタミン等)を持つ | アレルギー反応、炎症性物質の放出 | アレルギー、慢性炎症、白血病 |
膿瘍というのは文字通り膿です。膿はどういう時に出るか、というと感染がある時ですね。
そのため正解は好中球になります。
参考までにイラストでも、まとめてみました↓

こちらでは主に国家試験で聞かれやすいポイントをまとめましたので参考にしてください。
問23 抗悪性腫瘍薬はどれか。
① アンピシリン
② ワルファリン
③ プロポフォール
④ ドキソルビシン
⑤ フロセミド
答え:4
問23 解説です↓

抗悪性腫瘍薬は、がん細胞を攻撃する強力な薬ですが、正常な細胞にも影響を与えることがあります。そのため、効果と副作用のバランスを考えながら慎重に使われています。抗がん剤治療はつらい面もありますが、動物たちが少しでも長く、快適に暮らせるように使われています。副作用へのケアも、看護の大切な役割です。
問24 瓜実条虫の感染を媒介する生物はどれか。
① コロモシラミ
② ヤブカ
③ ヒゼンダニ
④ ネコノミ
⑤ ノイエバエ
答え:4
問24 解説です↓

瓜実条虫は特に猫でよくみられる寄生虫です。米粒のようなものが便から出てきた、といわれたらまず疑わしいのが、この寄生虫です。この瓜実条虫は写真問題でもかなり出しやすい問題になっていますので、併せて覚えておきましょう↓

問25 プリオン病でないのはどれか。
① 牛海綿状脳症
② スクレイピー
③ クールー
④ 慢性消耗病
⑤ ブルセラ症
答え:5
問25 解説です↓

プリオン病は、プリオンと呼ばれる異常なたんぱく質が原因で起こる神経の病気です。ウイルスや細菌のように遺伝子を持たず、たんぱく質の形が変わることで感染するという特徴があります。
この異常なたんぱく質が脳にたまると、神経細胞が壊れて脳がスポンジ状になり、認知症や運動障害などの症状が出て、最終的には死に至ります。
代表的な病気には、牛海綿状脳症(BSE)や人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などがあります。
治療法はまだなく、発症すると進行が早く、致命的です。感染を防ぐためには、原因となるたんぱく質に汚染された器具などの徹底した消毒や管理が重要です。
ちなみにブルセラ症の原因は細菌なので、異常タンパクが原因のプリオン病とは違います。
ここまでプリオン病について説明してきましたが、これはプリオンを知っているか。よりは有名な疾患であるブルセラ症について知っているか。を問いたい問題ですね。
問26 猫パルボウイルス感染症の典型的な症状はどれか。
① 腹水貯留
② 口内炎
③ 角膜炎
④ 白血球減少
⑤ 黄疸
答え:4
問26 解説です↓

「子猫の強い下痢と白血球の激減」はパルボを疑うサイン。特に子猫にとっては命にかかわる病気なので、ワクチンの重要性を改めて感じますね。実際の臨床現場では、突然ぐったりした子猫が来院してパルボが疑われるケースも少なくありません。覚えておきましょう。
ちなみに他の選択肢についてざっくりとみていきますと
① 腹水貯留⇒FIP(猫コロナ)など
② 口内炎⇒猫カリシウイルスなど
③ 角膜炎⇒犬伝染性肝炎や猫風邪など
④ 白血球減少⇒猫パルボウイルス感染症
⑤ 黄疸⇒FIP(猫コロナ)など
こんな感じになります。特徴的な症状が出る感染症は出題されやすいので覚えておきましょう。
問27 犬の疥癬症をおこす病原体はどれか。
① 皮膚糸状菌
② イヌノミ
③ 毛包虫
④ マラセチア
⑤ イヌセンコウヒゼンダニ
答え:5
問27 解説です↓

犬の疥癬症(かいせんしょう)は、イヌセンコウヒゼンダニが皮膚に寄生することで起こる病気です。強いかゆみを引き起こし、犬が頻繁にかいたり、皮膚が赤くなったりすることがあります。
- 激しいかゆみ:犬がしきりに体をかいたり、噛んだりします。
- 脱毛:毛が抜けることがあります。特に耳や顔、脚の部分に症状が出やすいです。
- 皮膚の炎症:赤くなり、かさぶたやフケができることがあります。
上記のような症状が出て、感染した犬との接触や、ダニがついた環境(寝床など)を通じて広がります。特に、免疫力が低下している犬や、衛生環境が悪い場合に感染しやすくなります。
薬を使って治療しますが、基本的には寝具や周囲の環境を清潔に保つことが重要です。
ちなみに原因であるイヌセンコウヒゼンダニは写真問題でも出やすいので知っておきましょう↓

他の選択肢についてもみておくと
① 皮膚糸状菌⇒皮膚糸状菌症
② イヌノミ⇒ノミ寄生
③ 毛包虫⇒毛包虫症(ニキビダニ症)
④ マラセチア⇒マラセチア皮膚炎
⑤ イヌセンコウヒゼンダニ⇒疥癬
ほかの選択肢は名前から分かりやすいものが多いので、原因となる寄生虫名と疾患名が違うものは試験に出されやすいものになります。
問28 抗体を産生する細胞はどれか。
① 好中球
② 血小板
③ 単球
④ Tリンパ球
⑤ 形質細胞
答え:5
問28 解説です↓

リンパ球には、Bリンパ球とTリンパ球という2つのタイプがあります。どちらも体の免疫を担う大切な細胞ですが、それぞれ役割が違います。
Bリンパ球は、体の中にウイルスや細菌などの「異物(抗原)」が入ってきたときに、それに反応して形質細胞(けいしつさいぼう)へと変化します。この形質細胞は、抗体というたんぱく質を作る専門の細胞です。
抗体は、異物にピタッとくっついて、体がそれを見つけて攻撃しやすくする働きをします。このように、抗体の力で異物を排除する免疫の仕組みを「液性免疫(えきせいめんえき)」といいます。
一方、Tリンパ球は、感染した細胞を直接攻撃したり、免疫全体の働きを調整したりします。
つまり、Bリンパ球は「抗体を作って体を守る担当」であり、その抗体を使った防御のしくみが液性免疫です。
問29 ウイルスによる人獣共通感染症はどれか。
① 破傷風
② ジステンパー
③ 日本脳炎
④ アスペルギルス症
⑤ 炭疽
答え:3
問29 解説です↓

日本脳炎は、ウイルスによって引き起こされる感染症で、主に蚊を介して人に感染します。特に夏に発生しやすく、日本を含むアジアの一部地域で見られる病気です。
ほとんどの人は感染しても症状が出ませんが、重症化すると高熱や頭痛、意識障害などが起こることがあります。場合によっては脳に炎症が起こり、命に関わることもあります。
日本脳炎ワクチンを接種することで感染を防ぐことができます。日本では、定期予防接種として子どもにワクチンが接種されます。また、蚊に刺されないようにすることも重要です。例えば、虫よけスプレーを使ったり、長袖・長ズボンを着たりすることで予防できます。
他の選択肢についてもみておきますね↓
① 破傷風⇒細菌が原因
② ジステンパー⇒ウイルスだけど犬などの動物のみ
③ 日本脳炎
④ アスペルギルス症⇒真菌(カビ)が原因
⑤ 炭疽⇒真菌(カビ)が原因
問30 病原体、感染性微生物またはその毒性代謝物により引きおこされる生物への危険性を表す用語はどれか。
① バイオセイフティー
② バイオテロリズム
③ バイオハザード
④ バイオセキュリティー
⑤ バイオテクノロジー
答え:3
問30 解説です↓

バイオハザードとは、「病原体や感染性微生物、またはそれらが作り出す毒性物質が原因で生じる生物への危険」を指す言葉です。主に医療や研究の現場で使われる用語で、感染症の拡大や人体への影響を防ぐための注意が必要になります。
具体的には
- ウイルスや細菌の漏洩:病院や研究施設で扱う病原体が外部に漏れ、感染が広がるリスク
- 病原体による感染症:エボラウイルスや新型インフルエンザなど、危険な感染症が流行すること
- 有害な代謝物:細菌が作り出す毒素(例:ボツリヌス毒素)が人や動物に悪影響を与えること
などがあげられます。防護服やマスクの使用、厳重な管理と隔離、ワクチンや治療法の開発が予防策として重要になります。

また、病院内の医療廃棄物は、どこにどの廃棄物捨てる必要があるのかをバイオハザードマークの色ごとに分類されています。こちらもあわせて覚えておきましょう。
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